優秀な上司像(私見)はそそのかし屋だと思います。手柄もしっかり渡すことでメンバーモチベーションアップと、人材育成手法としても、とても有効です。

ある特定の組織や、特定の上席の配下から不自然に多くの人が育っていくのか、不思議に思った事はありませんか?
私は何度もその不思議な場面を見てきました。
そのプロセスは様々なパターンがあると思います。ロールモデルを持たせて模範を示す、人生・仕事スタンスのビジョンを示す、上司の一生懸命さを見せる、人間的魅力で言う事をきかせる、等々あると思いますが、一番多いパターン且つ成功確率が高いのは、この「そそのかし」だと思っています。
私はその「そそのかし」手法が大好きです。
見込みのある若手を見つけると、自分がやりたい事(出来たら組織にも当人にもプラスになる事で、悪事ではない。自分がやるにはちょっとめんどくさい)をそれとなく示して、期待をもって彼・彼女にやってみない?とそそのかすのです。

人をそそのかして、成果を出すのは非常に効率的で、しかも人材育成に繋がり、その手法を学んだ人による再現化も期待できます。
見込みのある若手とは、刺激を与えれば、動けるエネルギーと健全な野心を持っている人です。ただ経験もなくて、やり方が分からない。何かしたいけれど今の自分に満足しきれていない人。

そそのかしてやりたい事の全体像とその効用、その具体化手法構築のヒント、それをやった人が獲得するであろう評価などの近未来ビジョンを接続しつつ、あたかも未完成のネタを今見つけた、どうすれば出来るかなぁ?と相談半分に見せかけながら接続するのが成功率が高い印象があります。
その人が動く事になったら、全方位的に支援し、褒めながら、彼・彼女主導で進めているプロジェクト(私は単なるアドバイザー)として仕立ててあげる。要所要所でアイデア・ヒントをあたかもその場での思い付きのように投げかけてあげる。せっかく渡したアイデアが彼・彼女にヒットしない事もあるのですが、必要であれば場をかえて何度か別の見せ方をしつつ再度投じ、取り組み内容の質を高めていく。

そして順調に動き始めたり、成果が見え始めたりしたら、すかさずその手法の言語化と、成果の数値化を支援する。それで再現性と確実性が更に高まる。
そして「そそのかし」の対として常に「褒め」と「おだて」をセットにしてゴキゲンな雰囲気を出すことも重要です。そうする事で部下も自分も楽しくなりますし。これの逆のケツバット(出来なかったらこんな罰がある)手法は最悪です。人の脳にはケツバットのイメージだけが残り、かえって成功確率が下がるという事が脳科学上、証明されています。

そして成果が出たら、しっかり彼・彼女の得点にしてあげるのです。ここで典型的にダメな上司は自分の手柄として横取りしたり、自分がやらせたと公言したりするので、実際に頑張ったメンバーが浮かばれません。ここは我慢のしどころでこらえにこらえて部下の手柄にする!!私の場合は部長賞とか無理やり作って表彰したり、評価のタイミングで重要トピックスとして取り上げたりしてました。そのプロセスで他の部長陣たちからの質問に答える事で、実は背後で自分のそそのかしと指導が大いに影響している事が知られていく。ちょっとイヤらしいけどとても重要なプロセスです(笑)。

こういう事例を半年に1人くらいづつ作れると、なんかアイツの組織は人が育つよね、的なウワサが流れていくようになります。
またその指導を受けた部下の多くは同じような手法を横展開していくものです。同じように上司に手柄を横取りされた部下はその部下の手柄を横取りする手法を身に着けてしまいます。刷り込みですね。

ここで我慢して、あざとく自分の評価を高めていくのが上司の腕の見せ所です(笑)
あと私の場合は、最初から俺は究極の「そそのかし屋」を目指してるから、と言い放って取り組みます。「お前もそれに前向きにのっかっちゃえ」と。
正面きって、お互いの為にお互いを利用し合おう!!と明るく企むのが好きです。