バリューチェーンという考え方をご存知でしょうか。
バリューチェーンとは、製品・サービスを作る際に、材料から加工、販売まで関わる総力を連鎖させて価値を高めていくフローの事です。この鎖が弱かったり、途切れていたりすると、その事業の業績・成果に悪影響を及ぼしてしまいます。

材料を仕入れて、加工して、販促をかけて、販売して、経費を差っ引いて、利益が出てきますが、その利益の総和がその会社のバリューチェーンの質であり企業価値そのもとだと思います。これはモノを製造する会社だけでなく、サービス提供をする会社も含めて全て同じです。
世の中の会社仕事の中でバリューチェーン全体に関わる仕事は意外と少ないと思います。営業、販売、経理、総務、企画、等々いろいろな役割で企業は構成されていますが、自社のバリューチェーンを理解している人はあまりいませんし、そもそも全体に関わる人はごく少数です。各パートの数字として何となく知っているのが精一杯です。
一方で個人事業主は意識せず、これを実行していると思います。
バリューチェーン思考が身についていない人はセクショナリズムに陥りガチな印象があります。自分の目の前の仕事、目の前のミッションのみに集中し、直接評価されない隣の部署や自分の業務を支えている部署に対して無頓着な様子。結果、任された仕事しか出来ないので異動しても修得に時間がかかる、前の仕事の方が良かった、等の不平を漏らすケースもあったり無かったり。

一方、バリューチェーン思考が身についている人は、平気で隣の部署の仕事に関わっていったり、手伝ったり、手伝ってもらったりしながら、自らの関与領域が広がっていき、出来る事が増えていく傾向があります。そしてバリューチェーンのどこにボトルネックがあるのか?何を変えると全体価値が上がるのか、という視点で考えるようになっていきます。
この違いはなぜ起こるのかと言うと、たぶん、その人の目的意識の違いだと思います。前者は自分の目の前のミッション・評価が目的で、後者は自分が関わるビジネスの最終アウトプット・社会的な事業価値の増強が目的なのだと思います。
このバリューチェーン思考を身に着けるにはどうしたら良いのでしょう?

先ずはそういうプロセスが大事であると知る事だと思います。
実務でバリューチェーンサイクルを一人で実行できる企業はなかなかないかも知れません。が、バリューチェーンという考え方を学び、自身の仕事に置き換えるような思考訓練をするとだいぶ変わります。
例えば、企業に属していても、プロジェクトリーダーなどになって(あるいは関わって)、自ら運営するプロジェクトの成果を最大化させる為にこのバリューチェーン思考で考えてみるのも良いと思います。
またBtoBの仕事などでは、お取引企業のバリューチェーンを分析してみると、どこを攻める事でお役に立てるかが分かり、自社共々、業績アップに繋がる事が良くあります。
更に、バリューチェーン思考をもっているとビジネスマンとしての「つぶし」がききます。大げさに言ってしまうと経営者と同じような視点で考えるようになるからです。守備範囲を広く持ち、人のせいにせず(いや、時々ヒトのせいにするか、、、)、どうしたらバリューチェーンを強く、太くできるか考えるようになるからです。ビジネスマンとしての価値が間違いなく上昇します!

バリューチェーン思考を持てると、製品作り(サービス作り)から販促・コスト・利益まで全体を見渡した改善提案をしたくなります。ビジネス全体のマネジメント思考になっていきます。
以前勤めていた会社では「従業員買経営者主義」という標語を掲げていました。
何のことかさっぱり分からなかったし、周りにそれを実践している人がいるようには思えなかったのが率直な実感ですが、きっとこのバリューチェーン思考で目の前の業務に取り組んでいるか?という問い掛けだったのではないか、と今、思っているところです。
