ひょっとして、題名から感動的な話を想像してしまうかも知れませんが、全くそのようなものではありません。。。

新卒一年目の経験、それも入社3ヶ月目くらいの出来事です。
ある朝、最初の配置部署のY課長(その組織には課長と言う人達が6〜7名いらしたのですが、その中でも最も偉い課長さんだったようです)からの電話をたまたま私が受けました。気怠そうな声で「T出版に行ってる事にしといて」との事でした。
係長にあたるW先輩(その部署では信任あつい人格者と評判でした)から、なんだって?と聞かれ、「T出版に行ってる事にしといて、との事でした!」と大きめの声でしっかり答えました。その3メートルくらい離れたところには部長・次長が座っていました。間違いなく聞こえたと思います。

するとW係長が、なんだかバツの悪そうな顔をして私を廊下へ引っ張って行きました。
「お前、なんであんな事言うんだ?」とお怒り気味。なんで怒ってるんやろ?新人らしく聞かれた事に対して正確に元気に答えたのに。。。
そこで初めて気付いたのでした。そか、さっきのはズル半休の連絡で気を許した配下の新人にY課長が本音言っちゃったのか、と。なら、みんなには内緒でな、とか言ってくれれば良いのに、とかも思ったりして。。。ホント気が利かない、気が付かない、天然ボケ新人でした。

そのY課長は後日、その事について何も叱ったりせず、週に2〜3回くらいのペースで赤坂に飲みに連れて行って下さいました。(飲むのは苦手なので内心迷惑でしたが、何かを配下新人に伝えようとしていたのではないかとも思えます)

その方から学んだのは「人生楽しんでるなぁ、この人。こんな風に自分は生きられるのだろうか?無理っぽいけど」と言う事と、やる時は凄くシャープな仕事をしてやはりNo.1課長だと思わせてくれ、仕事出来てそこの怠けだなぁ、と後日までしっかり記憶に残りました。思考の幅が広く、目的達成のためには手段を選ばず、ただし複数の手段がある時は一番楽なのを選ぶ、と言う事を学びました。

Y課長がよく連れて行ってくれた赤坂のバーはちっとも面白くなかったのですが、歌を歌えるようになり、タンバリンの叩き方を教えてもらい、先輩たちの話にさも感心して聞き入っているかのような振る舞い方の技術を修得させて頂きました。
Y課長とは、その後、異動で別の組織となってしまいまい、直接のやり取りはなくなってしまいましたが、非常にありがたい経験をさせて頂きました。
数年後、よく連れて行って頂いたバーのマスターにY課長がなったと言う情報が回って来ても驚きませんでした。そのお店にもその後一度もお邪魔してません。だって高いんですもん。。。
